第52話

周りに共存しないタイプねぇ。


私の場合は違うタイプだと思うけど。



「なぁ?お前って、本当に1人じゃねぇの?」



「何が?」



「バスの中で話しただろ」



「…………あぁ。そうだけど」



「不思議だな。お前、人に近付くの嫌なタイプなのに」



………………………。



「近付いて来る奴はいるんだな」



近づいて来る奴?



「人を避けているのになんで近づいて来る奴いるんだ?普通は避けているって分かったら近づかないもんだろ。なんだこいつってなるもんだろ。周りにも広がって誰も近づかないもんだろ。それなのに、なんで近づく奴がいる?」



そうか。


それが普通の反応だよね。


だけど、私は普通じゃないからな。


お父さんは何度も近づいてきた。


無理矢理な感じじゃなくてゆっくりと私のスピードに合わせてくれた。


だから、私も少しずつ心を開いたのだと思う。


この人は本気で私と話がしたいんだなって。


何度もそれを感じて何度も応えた。


何度も、何度も………………………


何度もだ。


よく諦めないで話しかけてくれたと思う。


私も最後はしっかり会話になっていたし。


会話になるまでとても長かったけど。


お父さんの本気が分かったからなのだろうか。


分かったからそれに応えられたのだ。


そうだ。


分かったのだ。


私は分かっている。


人に近づくのは嫌だと言っても人に近づかれるのも嫌だと言っても、本気で接している人を突き放したりしない。


私はいつの間にか接し方を決めている。



「確かに、私は人に近付くの嫌だ。でも、本気の人達には私も本気」



本気ならそれに応えることができる。



「私、特殊なの。人に近付かない理由もね」

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