第50話

エレベーターに乗り自分の部屋がある階で降りる。


部屋に近付くと柚月達がいた。



「あっ!リンリン!探したよ!」



雪が、半泣き状態で近づいてくる。



「どこ行ってたんだ!?なんで、ネコのぬいぐるみ?」



洋一は、額に血管が浮き出ていた。



「椎名さん………良かった」



柚月は疲れた表情で近寄ってきた。



「何も良くないけど」



「いや、良かったよ。あの馬鹿。椎名さんしか眼中にない。早く連れて来いって言うだけで。会話にならなくてさ。止めようとすると蹴るから。危なくて誰も近づけないし」



「それは大変ね。私も蹴られたくないな」



「うん。頑張ってね」



他人事のように言うのね?



また、歩き出すと見えてきたのはパーカー男が凄い速さでチャイムを連打している姿だった。



…………。



馬鹿なのかしら?



「ねぇ?あなた、馬鹿なの?」


「椎名さん!最初は、ごめんなさいでしょ!」

「リンリン、最高」

「ギャハハハ!アイツも馬鹿だな!火に油だ!」



うるさい3人組ね。


黙って。



私の声に気付いたのかチャイムの連打をやめてこっちを見ているのが分かる。










「真っ赤な血、好きか?」



「トマトなら好きよ。フルーツトマトならもっと好き」

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