第5話

ちく、たくと、部屋に時計の音が鳴る。その音が嫌で、私は時計の電池を抜いた。テレビの音も嫌で──電源を落とす。

静まり返った部屋。スマホで時間を見た。


まだ、もう少し……。



しばらくしてから、部屋の中にインターホンが鳴り響いた。びく、っと肩が動き、冷や汗が流れたけど。

画面に映された人物を見て、心の中でため息をついた。玄関の方に向かい、鍵と、チェーンロックをあける。



「おつかれ、弁当買ってきた」



いつものような笑みを浮かべる彼に、少しほっとした。まだ玄関なのに、胸元に埋まるように彼を抱き締めれば、「どした?寂しかった?」とからかうように笑う。




ううん、怖かった。

佳加よしかじゃない、他の誰かかと思った。

でも、佳加には言えない。心配をかけたくない。

それにまだ疑惑。確信はないのだから……。




「うん、会いたかった…」



私の言葉に笑った佳加は、「とりあえず中入ろ?」と玄関の扉を閉めた。ガチャンと鍵を閉めたのを確認したあと、部屋の中へと向かう。




「嫌な事でもあった?」



テーブルの上にお弁当の袋を置いた佳加。



「ううん…、会いたかっただけ」


「そうか、ごめんなちょっと来るの遅くなったな」



そう言って佳加は、部屋の時計を見た。



「あれ?時計止まってね?」


「電池切れたみたいで」


「マジ?変えは?」


「ううん、無いからまた買ってくる」


「言ってくれたら買ってきたのに」



また笑う佳加を抱きしめた。佳加は「どうしたよ?」と少し呆れながら言うけど、佳加は優しいから私を抱きしめ返してくれる。



優しい優しい、私の恋人。



佳加とは付き合って3ヶ月目になる。出会いはバイト先の人の紹介だった。少しだけ、怖いというか……大毅のような目立つ容姿をして苦手だなあと思ったけど。


バイト先の人から、佳加は妹のために学費を稼いでいたと知った瞬間、好きになるのに時間はかからなくて。



「好き……」


「花音」


「会いたかった……」



笑う佳加は、私を抱き上げると、寝室に向かいそのままベッドへと寝転ばせた。「俺も」と、馬乗りにる佳加は私にキスをしてきて。


私は佳加に抱かれる。



私の耳に聞こえるのは、佳加の声だけでいい──……

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