第474話
私は大塚さんの隣に座りダウンを脱ぐ。
脱いだダウンは椅子の背に掛けた。
亜紀は私の隣に座り同じようにダウンを椅子の背に掛ける。
「坊ちゃんは、ずっと嬢ちゃんの家におるんか?なんか、嬢ちゃんに関する連絡が来ないからおかしいなぁって思ってたんけど」
「自分の家にちゃんと帰ってる。つーか、泊まり禁止令だ。夜帰って朝来るんだよ」
「あぁ、それなら連絡来ないはずだ。平和な日々が暮らせて大助かりだっちゃね
ありがたや〜」
「感謝しろ。崇めろ」
「そこまでじゃない。正月はこっちにおるん?」
「そうだ。許可もらったし」
「へ〜ぇ。許可が降りたんかぁ。そりゃ意外なことでぇ」
「俺はお前が意外だが。家にいないのか?冬休み期間は引きこもり期間だろ」
「外の空気を吸わせるのも大事なことだっちゃ」
「へ〜ぇ」
この2人が普通に会話をしている。
大人になったのか?
「来たな。凛、ゆっくり休めてるか?」
光さんは大きなケースを持ってキッチンに入ってきた。
平べったいケースには蕎麦が入っているらしい。
「こんにちは。ゆっくり寛いでます」
「それは良かった」
作業台の上にケースを置き、水が入った鍋に火をかける。
「アメリカに行った奴がすぐ日本に戻って来たな。早すぎるだろ。もっと耐えろ。そんなんで大丈夫なのか?誠也から連絡が来た時は爆笑しちまったぞ」
光さんはクスクス笑いながら言う。
「うるせー。ちゃんとあっちで扱かれてる。筋肉痛になるほどにな」
「そうか。あっちに帰ったら大変だろうなぁ。可哀想に」
憐れみのような目で亜紀を見ている。
「性格悪い。一番悪いぞ!年下を虐めて楽しいか?」
「あぁ、楽しい。凄く楽しい。お前が日本にいること柚月は知ってるだろうな。会ったんだろ?奏多に。この辺りをウロウロしてるらしい。海も会った。だろ?」
えっ?
海も奏多に会ったの?
いつ会ったの?
最近ってことだよね?
「会ったなぁ。びっくりだっちゃ。普通に歩いてんよぉ。壱夜の姿はなかったんけど。あっちも俺とバッタリ会って驚いてたわぁ。尾行してたわけじゃない。偶然って感じなぁ」
「1回だけじゃなくて3回会ったんだろ?」
「ん、2回目の時に探ったんけど、特におかしなところはなかったんよ」
へ〜ぇ、3回もよく会ったわね。
そんな頻繁に会うような人じゃないのに。
この近くに住んでいるのかしら?
マンションはこの辺にないからアパート?
………………。
アパートに住むような人じゃないか。
「年末に面倒ごとは嫌だからな。年始も嫌だが。海は大人だから分かっているはずだが、絶対に面倒ごとには持ち込むなよ。どっかのバカみたいに喧嘩を売ったとかな」
あれ?
なんか、光さんの目が本気だ。
もしかして、何かあったの?
「ねぇ?椎名さんは初日の出行くの?私はね、海さんと一緒に行くんだ」
「初詣は?」
「初日の出を見てから行く」
「そっか、私は大塚さんと逆だね。初日の出は最後」
「初日の出を見たあとは?」
「家でゴロゴロする。お店もお休みだし」
「うんうん。私もそうだよ。元日はゆっくりだよねぇ」
家に帰ったら寝ないと。
絶対に眠い。
「若いっていいな。俺にはその体力はない。初詣行くだけだ」
光さんがそう言うと隣にいる亜紀から「おじさんは無理だろうな」と小さく呟いたのが聞こえた。
だが、その呟きはしっかり光さんに聞こえたらしい。
「おい、今すぐにアメリカに帰ってもいいぞ。連絡してやるよ」
「はぁ?あんたが体力ないって言ったんだろ!」
喧嘩腰にならないでよ。
今年最後の日にうるさいな。
「ねぇ?日向は課題終わったみたい。連絡きたんだよねぇ。日向が課題を終わらせたみたいだって」
「えっ?そうなの?」
「うん」
それは誰情報?
大塚さんのところには連絡がきたのね。
「大塚さん、日向は別格だから。無視が一番だよ」
「海さんにも言われた。でも聞いちゃったもんはしょうがない。そして!!日向は旅行中らしい。一人旅だって」
へ〜ぇ。
それは優雅だね。
でも、親とは行かないんだね。
いや、行けないのか。
番組も降ろされてしまったみたいだし。
1人で行動したほうが目立たないだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます