第465話
家に着いてリビングに入るとすでにお父さんが帰っていた。
「おかえり」
「ただいま。今日は早いね。お母さんは?」
「夕食の買い出し。冷蔵庫に何もないから。牛乳やお茶があっても腹が満たされないし。冷蔵庫をいっぱいにするか空にするか。100と0しかないから」
まだ冷蔵庫空っぽなんだね。
やっぱりクリスマスまで空っぽのまま?
「にゃ〜ん」
私の足元にスリスリと寄ってきたケイはよく動く。
八の字のように私の足元をクネクネと歩くのだ。
部屋があったかいから?
ストーブの前から動かない!って感じで丸くなっていたのに、今日はそんな様子もない。
ケイの頭からお尻に掛けてポンポンと叩きながら愛でる。
あごの下も忘れず撫でる。
そうすると「グルグル」気持ちよさそうに鳴くのだ。
ケイを撫でるより先に荷物を置かないと。
もこもこ部屋着に着替えてぬくぬくしないと。
一旦、ケイを撫でるのをやめて自分の部屋に入り着替える。
リビングに戻るとソファーの上で背伸びをしながらフミフミしているケイがいた。
なんて可愛いんだ、うちの猫は。
これを動画に撮って亜紀に送ってあげよう。
うちの猫の可愛さを共有しなければならない。
「はい、ココア。これ飲みながらお話ししましょうねぇ」
「えっ?あ、うん」
猫の絵が描かれているコップを受け取りケイの隣に座る。
「さっき、海から連絡あってね?なんか、凄く怒っていたんだよねぇ。まぁ、自分の彼女が巻き添えになりそうだったからっていうのもあるかもしれないけど」
ゔッ、早速チクったな。
まぁ、それがヤツの仕事でもある。
「ついさっきのことなのに早いね」
「何かあったらすぐ連絡することって言ってあるからね。でもさ、めちゃくちゃ怒っていたから何事かと思ったよ。詳しく聞いたら表の人に迫られて壁まで追いやられていたって。しかも、手を出されそうになっていたのに凛の動きが鈍くて、あと少し遅かったら触れられていた。表の人は裏の人より弱いから躊躇うのは分かるが、危険性を感じないのはマズイのではないか?って」
危険性って言われても、そういう危険性は感じられなかったから。
なんというか………………
裏ばかりだったから表となると………………
「うん、まぁ、あれだよね。凛は頭の中で色々考えるタイプだからね。それから行動するでしょ?希ちゃんはズバッと言うタイプだし。真逆だからなぁ」
「体を押して後ろに倒れて受け身が取れなかったら頭を打って死んでしまうかもしれないって考えた。殴るとなると顔?お腹?気絶して体が倒れて頭を打って死んでしまうかも」
「あっ、うん。そうだよねぇ。でも、なんでそんな死を意識しちゃうかな?加減するでしょ?」
「………………する」
確かに力加減はするけど。
でも、なんか………………
「ん〜、表相手に手を出すわけにはいかないって考えているんだろうね。前はそんなことなかったはずだよ。考え方が変わったんだろう。その状況にならないと気づかない。でも、危険性があった場合は違うはず。ちゃんと体は動くはず。酷い惨状から生還したからね。あれと比べたら今日の子はなんでもないって思っちゃうかもしれない。というか、面白いお店に行ったね」
考え方が変わった?
表の危険察知が緩くなったのか?
「大塚さんが行きたいお店だった。人気店らしい。なんか変わったお店だった」
「ああいうのが好きな人を集めたお店だね。考えるもんだよねぇ。ターゲットは女性だもん。で?そのお店のスタッフに言い寄られたわけだ?」
「なんかちょっと違うけど」
ナンパされたわけではない。
「私の肌が綺麗だって。白いし。どうしてそんなに綺麗なのか知りたいと。化粧水とか乳液とか。そういうのじゃないかな?」
「そっか。そっちか。確かに凛は他の人たちと比べると白い………………俺も白かったけど。今は程よく焼けちゃって。亜紀君と会わせてあげたいよね。亜紀君の方が色白だと思う」
確かに亜紀は色白だ。
学園の時もフードを被り素顔を隠していたし。
裏にいる連中は色白率高いのでは?
光さんたちは普通だけど。
………………。
窓がない部屋にずっと居ればいいなんて言えないよ。
もう会うことないけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます