第73話

その日も私の周りでは不運なことばかりだった。


学校に行くと廊下が水で濡れていた。


どうやら、調理室の水道が破裂して大量の水が溢れたらしい。


しかも、被害は私たちの学科のみ。


授業は仮教室で行うことになったのだが、チャイムの音が聞こえないということが分かった。


どうやら故障しているらしい。


濡れた廊下を歩いている人が目の前で転んだり、水道屋さんが来ても修理するのに部品が足らず今日中には直せないと聞いたり。



「ねぇ?椎名さん。休みの日に一緒に行きたいところあるんだけど。駄目かな?椎名さんの地元なんだよ」



「何があるの?」



今度はおかず付きのお弁当を食べながら大塚さんと中庭でお昼の時間を過ごしている。


もう、絶対におかずは忘れない。



「ホテルでスイーツの食べ放題!しかも、有名パティシエ達が監修したスイーツ。ここに、チケットが2枚!どう?行かない?友達から貰ったんだ!」



「今度の休みは京都なの」



「あぁ、サークルのだっけ?なら、次の休みでもいいよ」



「いいの?」



「うん。まだ期限あるし。しっかし、実費で京都は痛いよねぇ。しかも、頼んでもいないのに参加とか、ね」



「………………」



あの野郎。



「あれ?椎名さーん。ちょっと目が怖いよ。もっと、穏やかにね。まぁ、イラつくのも分かるよ。勝手に申し込みされちゃって。それ、本人に言ったの?」



「言ってないよ。話をすると罵りたくなるから」



「………………これは、本気で怒ってる」



勝手にこんなことされて怒らない人はいないと思う。


行くなんて言ってないのに。



「あっちも何も言ってこないし。普通は一言あってもいいと思うけど。あの野郎は何を考えているのか分からない」



「あの野郎って………………なんで、勝手に行くって言ったんだろうね?おかしくない?やっぱ、ちゃんと聞いたほうがいいと思うけど」



「聞いたところで理解できないと思う」



「………………」



理解できるようになる話せと言ったところで、ちゃんと理解出来る言語で喋るかどうか………………


京都で何かあったところで無視だな。


研修だけ参加してその他は参加しなくてもいいし。



「椎名さん。最近、なんか凄く日向君の周りがうるさくない?」



「前と同じでしょ」



「いや、違うって。前より酷いっていうか。帰りによく見かけるようになったから。言いなりって感じ」



この前より酷くなっているのか。


京都に行く前に潰れてしまえばいいのに。



「大塚さんもついてないね。変なものを見ちゃって」



「私、言い寄られているのを見てるとさ。なんか、重そうだなって思う」



「重い?」



「両腕にぶら下がってる感じでしょ?重いじゃん。肩こりとか酷そう」



なるほど。


そういうところを考えるのか。



「大塚さん」



「何?」



「なかなか、いい思考してるよ。重そうっていう考えはいいね。確かに、重そうだ」



「あれ?椎名さん?なんか、感動みたいなことになってる?なんかおかしいよ。それ、絶対におかしいよ」



両手に花なのではない。


両手に錘だ。


重い錘をぶら下げているのか。



「プレゼント渡そうとした子が突き飛ばされてたり、挨拶しただけで怒鳴られたり、狂気的になっているよね。なんか、おかしい人っていうかさ。威嚇してる猫みたい」



猫?


猫………………


いやぁ、猫ではないな。


あれは、猛獣とかの分類だろう。


目が本気だからね。



「大塚さんも気をつけるべきだね。日向が近くにいたなら、すぐに離れないと巻き添えくらうよ。大事になったら大変だからね」



「大事って?」



「階段から落ちるより酷いこと。例えば、改造されたスタンガンを浴びせられるとか」



「なぜ、浴びせられる表現?それって、顔からぶっかけられるとかの表現だよ。っていうか、スタンガン!?」



「一回で終わらないと思うから」



リミッターが外れてしまえば、加減なんてしないだろうし。


きっと、今まで以上のことをやり出すはずだ。


大塚さんにも忠告しておくべきだろう。


どうやら、よく見かけるようだし。



「大塚さん。解放された猛獣は何をやり出すのか分からないものだよ。気をつけたほうがいい」



「なんだろ。椎名さんが言うと妙に説得力がある。なんで?」



怪我なんてさせたくないし。


巻き添えが一番嫌だ。


自分は何も悪くないのに面倒に巻き込まれるのは処理が大変だもの。


嵐が去るのをじっと待つしかないのだ。


隅っこでね。

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