第13話

ネェさんにお願いされた日からもう3回寝た。

今日はその日。


「いい?ニーナ、しくじるんじゃないよ?」


「しくじるって?」


「バカなアンタとも今日でお別れってこと」


「ばいばい?」


「そうバイバイ。アンタは幸せになんてなれっこないんだから、バカなままで居る事だね」


ポンポン、と優しく頭を撫でるネェさんは少し寂しそうに笑ってた。それでも何か吹っ切れたようで、いつもより軽い足取りで部屋を出て行った。


「217番」


「はぁい」


男がいつものように部屋に連れて行く。

鎖を付けて鍵を掛けるその背中を見下ろしながら「我慢」と小声に呟き、隠していた銀色の物を男の背中に振り下ろした。


しっかりと目を見開いて背中に埋まっていく銀色の物を見つめた。手に伝わる感触が生々しく、フォークでパンを刺す感覚よりも硬かった。


力を込めないと刺さらない。


「テメッ……くそがっ!!!」


男の顔を見ればすごく痛いって分かる。

血が出るのが一番痛いってあたしも知ってる。どれだけ痛いか、辛くて泣きたくなるか、死にたくなるか。


「いつも痛いのしてくるから、お返しだよ」


「クソ女がっ!!調子に乗るなぁぁぁっ!!!」


痛いのに、絶対痛いのに。

男はすごく怖い顔をしてあたしの足を引っ張り、勢いよく床に張り倒す。


ゴンッと頭を打ちつけ視界がゆらゆら揺れる中、男があたしを見下して踏みつける。


「痛いっ、やだ痛いっ!!」


ちゃんと刺したのに、痛いのにどうして動けるの?


何度も何度も足で踏みつけられ蹴飛ばされ、男よりも痛い思いしてるんじゃないかってくらい痛くて辛くて。


「なにしてんだ!!」


ドア代わりに隔てられた布が揺れる。

男を羽交い絞めにして止める別の男があたしを見て顔を歪める。


「このメス豚ぶっ殺してやる!」


ぐちゃぐちゃに泣きながら真っ赤な世界に染まった視界にあたしはプツリと深い夜に飲まれた。


――帳、早く迎えに来てよ。

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