第12話

――1ヶ月経ったかどうか分からない。


いっぱい寝たら帳が迎えに来るって言ってたけど、全然来ないじゃん。


相変わらず毎日仕事で、先輩が数人が部屋から消えたけど心配なんてしなかった。


どこに消えたか分かってる。


消える理由はいっぱいあるけど、大体はお腹がおっきくなるのと、ちゃんと仕事が出来なくなって処分させられる。


定期的に貰う白い粒を飲まなきゃあたしも同じようになる。飲んでいてもそうなるときはあるけど、そうなったときは別の場所に連れて行かれるだけだ。


どうなるかなんて知らない。

誰もわからない。


ただ戻って来れない。

それだけだ。


「ニーナ、お願いがあるんだけど」


「なに?」


こっそりと耳打ちしてきた先輩、ネェさんにあたしは振り返る。


「客と此処出るから、これであの男を刺して来てくれない?」


「痛い思いする?逆らったら痛いされるよ?」


「大丈夫、いっぱい刺せば痛い思いしないから」


人差し指を唇に当ててコッソリ渡してきた銀色の物。何かは分からないけど、ふぉーくと同じで刺せばいいってことは分かる。


「危ないからニーナはここ触っちゃダメ。痛いからね」


「うん」


その痛いところを男に刺すのはいいの?って思ったけど、ネェさんがお願いしてきたからやるしかない。


逆らうと痛い思いするのはこっちも同じだ。

機嫌が悪いとすぐ叩くから、機嫌を損ねないようにしないとならない。


「いつやるの?」


「ニーナが3回寝てからの仕事の日。あの男がいつもの部屋に連れてったらやるんだよ」


「わかった」


いっぱい寝て我慢すれば帳が迎えに来てくれるから、今は嫌なのを我慢してやる。

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