第10話

喋るだけの練習をしている帳はあたしに一切触ることなく、途中で声が掠れると優しく水を飲ませてくれた。


喋るっていうより色々聞いてくるほうが多かったけど、分かる範囲で答えれば帳は顔を顰めたりして1人でブツブツ言ってた。


そんな日が数日続いてた。


「ニーナ、最近待遇良くなったか?」


「たいぐう?」


「いつもよりイイ思いさせてもらってるかってことだ」


縛られることが嫌だと学習したあたしに、帳は自分に触らないことを条件に解放された。


帳に触らない限りは自由にしていいと言われたのでベッドでゴロゴロしながら喋る練習をしていた。


「んーイイ思いは餌いっぱい貰えたり、痛いことされなかったり、ふかふかのベッドでこうやってゴロゴロ出来たりすること?」


「そうだ」


「んーじゃあイイ思いない。帳と一緒に練習するときだけはイイ思い、たいぐう?良くなった。ゴロゴロ出来る、イイ待遇ね」


「そうか」


「なんでそんなこと聞くの?」


別に帳との練習がなくても今生きてることで十分だと思ってる。ふかふかのベッドでゴロゴロするのもいいけど、ほんの数時間だけの思いだし。


「俺が暫く“練習”に来れなくなったらお前どうする?」


「帳もやっと仕事するんだ、頑張って」


「そうだけど、そうじゃねぇよ。お前、俺が来なくなったらどうなんの?」


「どうなんの?っていつも通り客の相手して終わるよ?あ、でもそろそろ股から血が出るから暫く別の部屋に行くと思う」


「股から血って、生理だろそれ」


「せーり知らない。血出るといつもの客じゃない相手するだけ」


「そっち専門の相手か」


「でも痛いから好きじゃない。お腹痛いのに仕事しなきゃいけないのやだ」


「……1ヶ月我慢出来るか?」


「1ヶ月ってどれくらい?何回寝たら1ヵ月?我慢するって何を?」


「いっぱい寝てりゃあすぐだ。痛いのも腹減らしも我慢すりゃいい。そしたら痛いも腹減ることもなくなんぞ」


帳のその言葉にあたしは目を輝かせてたと思う。

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