No.217
第2話
真っ暗な地下世界に艶かしい明かりが灯ると1日の始まりを意味する。
――ここは売春宿。
幼い子供から年増まで幅広い年代の女子供が居る。
そんな場所に長年身を置くあたしは、今年で18歳になるはずだ。
あたしよりも歳上の大人に教えてもらったから、多分合ってると思う。ちゃんとした世界に居れば高校を卒業してるとか、その高校って言葉すらあたしには意味が分からない。
理解してるのは“お客”が来たら「いらっしゃいませ」って言うのと「また来て下さい」ってだけ。
それさえ言えれば他はどうでもいいと言われた。
一般的な知識は先輩が教えてくれるけど、それもちゃんとした意味かどうか怪しいものだ。
「――217番、客だ」
ブタ小屋のような狭い部屋に、ぎゅうぎゅうに押し詰められた女達を番号で呼ぶ男は、汚いモノを見る目で「早くしろ」とドアを蹴飛ばす。
「ニーナ、頑張っといで」
膝枕をしてくれてた“先輩”があたしの身体を叩いて起こす。
―·頑張るって何?
その意味すら分からずに、いつも掛けられる言葉に頷くしか出来ない。
「さっさとしろ!」
ペタペタと床を歩く素足の音に苛立つ男は、あたしの腕を掴んで引っ張り、スタスタと歩き出す。
自分の腕にはNo.217の焼印が肌に馴染んでいて、今となっては少し目立たなくなってきている。
「今日は新規の客だ」
「新規ってなに?」
「学習能力のねぇバカ女に説明してる暇はねぇんだよ!さっさと仕事しろ!」
薄いカーテンで区切られたベッドに突き飛ばしてガチャガチャと鎖で繋ぐ男は、犬に縄を付けるように右足に鍵を掛けた。
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