ROUND1

第1話

ROUND1


二股恋愛からプロボクサーの道へ



 吉見貴子は過去に付き合っていた彼氏に二股をかけられた経験のある女の子。彼女は後に女子プロボクサーとしてリングに上がることとなる。リングに上がるきっかけとなった1つの事件は、中3時代に交際していた彼氏の倉森剛彦が貴子本人以外の他の女性とも男女交際していたことが原因で始まった。貴子が中3だった頃、当時高1だった剛彦の二股恋愛が貴子にバレる結果となり、貴子本人は剛彦に対して、もう二度と口もききたくないとの態度を示して別れることとなった。

 翌年、貴子は高校生になった。以前交際していた彼氏とは別の高校に入学した貴子は、通学中にふとしたことからボクシングジムの看板を目にした。貴子が通っている大串高校の最寄り駅の近くにある原島ボクシングジム。『女性歓迎』という看板を目にした貴子は、中学時代から続けていたバレーボールをやめボクシングへと転向する道を選んだ。剛彦のことが今でも許せなかったからだ。高校に入学した貴子は、中学時代から続けていたバレーボールをするためにバレー部に入部した。ある日のこと、貴子が所属していた大串高校女子バレー部は、隣の古城高校と練習試合をすることとなった。実は同じ日、男子バレー部も同じ組み合わせで練習試合が組まれていた。何と、古城高校の男子バレー部に貴子が二股をかけられていた剛彦が部員として所属していたため、練習試合の会場で再会することとなってしまった。貴子は剛彦のことがどうしても許せない。いとこのちえみと相談した上、家族とも相談、バレー部を退部することとなった。動機は、剛彦のことが許せなくて怒りがおさまらず、その怒りがボクシングへと転向させる動機となってしまった。貴子の両親のうち、父親は、

「なんで、貴子がボクシングなんてものをしたがるんだ。付き合っていた彼氏が許せないからって、殴り合うことはないだろ。顔に傷が残ったらどうするんだ。」

と反対したのに対し、母親の方は、

「この娘のやりたいようにしてやろうよ。ボクシングの一件は私が協力するから。」

と、味方になってくれた。実は、貴子の母親ののりこは美容師。家は美容院を経営していたこともあって、そこの事情についても多少理解できていたのだ。晴れて、貴子は母親の協力のもと、原島ボクシングジムへ練習生として入門することができたのだった。ボクサーとしての第一歩を踏み出した貴子は、毎朝のロードワークやジムでの厳しい練習というボクサーとしての生活が始まった。ロードワークのコースには、幼いころからの大の親友の有里の家の周りもコースに入った。ある日のこと、ロードワーク中に有里と偶然出くわすこととなった。この日は休日で学校も休み。有里と違う高校に通い別々の高校生活を送っていた2人は、休みになるたびにそれぞれの学校であったことを話し合うことが日課となっていた。

「やあ、たかちゃん。がんばってる。」

と有里が声をかけると、

「がんばってるよ。元気!!元気!!」

と貴子が答えた。

「私の行っている高校の先輩で、たかちゃんに以前告白したことのある先輩知ってる。。」

「あ、春樹(はるくん)か。登下校の時に、電車に乗り降りする時に駅で入れ替わりになるから、たまに見かけるけど。」

「あの春樹。男女交際については本当に不器用だよね。二股かけることできねえんだよ。まあ、それが春樹(あいつ)のいいところだけどね。実はね。どうも、短大の保育課程に行くらしいよ。春樹(あいつ)。小学生の小さい弟いるから、話聞くと結構面倒見いいみたいだから。ということで、春樹(あいつ)、保育士になるらしいよ。」

「へぇーっ。はるくんが。」

「そうそう。あいつ、結構スポーツに興味あって、インターネットで野球やサッカーの情報よく集めてるんだよ。ボクシングも見てるとの話。他の男子から聞いたところによると、女子プロボクサーの胸見ていたらしい。との話も。あいつ、ビジュアル系好きだもん。先々、たかちゃん、プロボクサーになるつもりでしょ。プロの試合に出たら、たかちゃんも結構なビジュアル系だから、胸見られるかも。」

「・・・・・・・。わかってるよ。」

「がんばって。」

というエピソードがあった。有里の家は酒屋を経営している。別れ際、貴子は飲み物を差し入れしてもらった。

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