第95話

ルイは、来ない。

50分、ここでヒカルと2人きり。



胸あたりにキスをしてくるから、ヒカルの髪が、私の顔に当たった。

それはルイの匂いじゃない。

爽やかな、海のような、そんな香水の匂いがする。



また、匂いが移る。

3度目はないと言ったルイに、怒られる。



「やめ、お願い⋯」


「じゃあ別れて」


「ルイ、くん、が、怒る⋯⋯、やめて⋯」



その言葉に、ピタリと動きをとめたヒカルは、胸の口付けをやめて泣いている私の顔を見下ろしてきた。



「怒られる? なんで? 」



なんで?

あなたが、こんなこと、するから。



「ヒカルに、近づくなって、言われてる⋯」


「ふうん、この前の、バレたの?」


「っ、匂い、ヒカルの⋯」


「へぇ、匂いね、あんな短時間でつく匂いとか⋯、あいつマジイカれてる。⋯あいつが俺に何も言ってこないし、なっちゃん誤魔化したの? えらいね」


「も、怖い⋯、なんで、なんでこんなことするの⋯」


「まあ、匂いなら大丈夫、帰りはシャワー浴びればいいだけ。な?」




ここは、シャワールーム。


髪を、濡らしたまま、帰れと?




「なっちゃん、なんで分かんないかな。俺がこうやって抱くの、なっちゃんのためなのに」


「っ、」


「別れたら、優しく抱いてあげるのに」




そう言ったヒカルは、行為を続けた。

この前よりも、乱暴に。

口の中に出されるそれを、飲めと言う。



やっと行為が、終わったと、ずっと泣いている私を抱えたヒカルは、終わったはずなのに、私を連れてシャワーの前に来ると頭から水をかぶせてきた。



冷たいシャワーが、少しずつぬるくなっていく。




「ほら、まだ50分じゃない」



後ろから、挿入られ。

立ったまま、シャワーを浴び続けるまま、後ろから犯された。




この行為を、ルイにバレたくないらしいヒカル。


けれども、ヒカルはルイと別れろと言う。



もう、何が何だか分からない―――⋯。



シャワーのお湯と一緒に、私の涙もそこへこぼれ落ちた⋯。

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