第16話
16
バスを降りて…フラフラと歩いた。
家までの数分が目眩がする程に遠い。
俯いて前さえ見えてなかった。
ドンっと額から人らしきモノにぶつかって尻もちをついた。
「いってぇ…」
『よぉ…大丈夫かよ…聞いた通りじゃん』
俺は額に手を当てて聞き慣れた声に顔を上げた。
声の主は手を差し伸べてる。
「潤くん…」
『ホラ、立てよ』
グイっと引っ張りあげられて立ち上がった。
そこはもう、俺と潤くんの家の前の道。
潤くんは整った顔を歪めて俺を睨んだ。
「ありがと…こんな時間に家の前で何してんの?」
俺はケツを叩きながら潤くんの鋭い視線から逃げた。
『翔さんに頼まれたんだよ…おまえ…最近様子が変だって…』
ピタっと動きを止めて潤くんを見た。
「様子が変?何言ってんのかな、あの人…俺は」
『いいから来いよ』
「わっ!ちょっ!潤くん!」
潤くんはなかなか乱暴な勢いで俺の手を引いた。
俺の家の向かいにある潤くんの家に連れ込まれる。
二階へ上がり、潤くんの部屋に押し込まれた。
「なんだよ!!俺は変なんかじゃないってば!」
『鏡!見ろよ!何だよそのドロドロの服!顔だってススまみれじゃねぇかよ!あと、目の下のクマ!!』
部屋にある姿見に写った自分に驚かなかったわけじゃない。
制服はあちこち蜘蛛の巣が掛かっていて埃まみれだった。
顔に至っては…悲惨なくらい目の下が真っ黒になってクマが出来てる。
「潤くん…」
姿見を見るように促した潤くんは後ろから俺の肩に手を置いて…鏡越しに話かけて来る。
『痩せたよ…おまえ。ただでさえガリガリなのに…』
「…」
気づいたら…涙が流れていた。
『話して…何があったか。いいよな?…あぁ…その前に、風呂入って来いよ。』
今日は親は居ないと言って、俺を一階にある風呂場へ押し込んだ。
小さな頃から…泥遊びした後なんかは良くこのお風呂に入ったっけ…
俺は静かにシャツを脱いだ。
洗面台の鏡に映る上半身
俺は…どれくらいの夢を見てるの?
相葉さん
相葉さん
この紅い痣は…
俺を抱いた証拠でしょ?
相葉さん
ねぇ…
相葉さん…
「ゔぅ…ぅ…」
カタンと扉の向こうで音がする。
『ニノ…大丈夫か?』
潤くんの優しい…俺を心配する声は…
俺をもっと…もっと泣かせた。
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