第7話

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翌日だった。

食堂で翔さんから妙な話を聞かされたのは。


バス停に居る男性のお化けの話だ。


俺は相葉さんの事が一瞬だけ頭をよぎったけど、いつだってちゃんと彼には足が付いていたし、俺に触れる事だって出来た。

だから、生身の人間に違いないって思ったんだ。


…生身の人間であって欲しい…

それが俺の願いだなんて…気付かずにいたけれど…。


翔さんは大して気にするでもなく、学食1カロリーの高いB定食を頬張っていたっけ…。


結果的に俺は二回相葉さんとバス停で出会い、二回とも妙な別れ方をした。

あんな一瞬で、どこにいけるって言うんだろ…。だけど…そんなバカな…。

翔さんの言うお化け説は俺の中で自嘲気味た笑いと共に消えた。


だって、相葉さんは生きてる。

俺は鞄の中の文庫本を取り出し、教室の自分の席に座りながらその本を見つめた。


相葉さん…今日もいるかな…


この名前の調べがつかない気持ちはモヤモヤと霧のように広がっていく。

真っ白で、もうすぐ前が見えなくなる。


窓際の席から外の校庭に目をやる。

ミンミンと陽射しの中で戦うようにして鳴き声を張り上げる蝉にため息をついた。


相葉さんなら…この蝉の声に


なんて声をかけるんだろう。


それから…

昨日聞けなかった大切な人とのその後は…

俺に教えてくれるだろうか…。


午後からの授業がやけに長く感じた。

教室のざわめきは暑さに拍車をかける。


俺は大事な人からの手紙でも読むみたいにして授業中も机の下で文庫本を読み続けた。


確かに有名な著書だけあって、中身はとても面白かった。

今の時代にはない正義感やなんやが溢れている。

何だか相葉さんを思い出さずにはいられなかった。

いや、ストーリーがどうのじゃなく…なんだろう…このノスタルジックな気分。

文庫本を胸に抱き、それから机に置き、頬を乗せて突っ伏した。


ミンミンと…


蝉が鳴く。


生ぬるい潮風に乗せて相葉さんのクシャっと笑う顔が浮かんでは消えた。

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