第2話
2
「あそこ!出るらしいぜ」
学食で騒がしい連中が、盛り上がってる。
俺は1人トレイに載せたカレーを静かに机に、置いた。
「ニノっ!聞いた?」
隣の席にガタンと乱暴にトレイを置きながら話しかけてくる。
この学校じゃ、有名な先輩、桜井翔だった。
「何がですか?」
俺は眉間に皺を寄せながら怪訝な顔でカレーを掬った。
「あの一日2本しか来ない海沿いのバス停だよ!」
少し興奮気味に話す翔さんに俺は見向きもせずにカレーを口に運んだ。
「出るって。」
「出る?」
グラス風のプラスチックカップに入った水を一口飲む。
「これだよ、これっ!」
翔さんが手をぷらぷらさせてお化けのポーズを取る。
俺は肩を竦めて苦笑いする。
「俺、翔さんがその手の話、信じる人だと思ってませんでしたよ。意外。」
二口目をスプーンですくう。
翔さんはぷらぷらさせていた手をパンっと膝について、今度は手を合わせ頂きますっと呟いた。
「相変わらず冷めてんなぁ、おまえは」
「冷静って言って貰えますか?…あ、またB定食頼んでるし…翔さんダイエット中って言ってませんでした?」
「おっしゃる通り」
翔さんは肩を竦めてフォークとナイフでハンバーグを切り分け始めた。
「だからぁ、こうして優しい俺はお前のだいっすきなハンバーグの端っこを分けてやろうってんじゃないか。…ホラ、ハンバーグカレー!it's amazing♡」
「これっぽっちじゃ、学食No. 1の高カロリー食に変わりないですからね…」
俺はため息まじりに呟いた。
翔さんは泣き真似をしながらも、美味そうにハンバーグとエビフライ、ウインナーに目玉焼きが乗った皿の中身を堪能し始めた。
ライス大盛りになってるし…
リスみたいに口をパンパンにしながらまた喋り出す。
「ニノ、あのバス停たまに使ってるよな?」
「あぁ…たまにね。なにせ、2本しか来ないから。だからほんと、たまにだよ?」
「男の幽霊らしいぜ。いっつもあのバス停に座ってるって」
翔さんが面白そうにクスクス笑う。
「へぇ…」
「へぇっておまえ…霊感は?ない?」
「霊感うんぬんの前に幽霊なんて…いるでしょうけどね…そんな噂になるくらいみんなに見えてるんじゃ、もうその人幽霊じゃなくて、ただの人間なんじゃないですか?…俺、あそこで男の人…何回か会ってますよ?」
翔さんが飲んでいた味噌汁をブハっと吐き出した。
「わぁっ!きったないなぁ…」
顎に垂れた味噌汁を手の甲で拭いながら翔さんが呟いた。
「おまえ…会ってんじゃない?」
「はぁ?」
「いや、だからさ、その有名な幽霊にだよ」
夏真っ盛りの高校の学食。
2年上の先輩は
どうやら暑さで頭がイかれたんだと
ハンバーグにカレーのスプーンを突き刺した。
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