第96話
「…マリ?」
「っ、」
叔父さんの声はやけに落ち着いていて、顔は私の左耳のすぐそばにあるのかそちらからいつもの叔父さんとは思えないような不気味な声で名前を呼ばれた。
「もしかして昨日の僕と叔母さんの会話聞いてたの?」
「っ、」
叔父さんの両手はしっかりと私のおでこと首を捉えていて、そこまで力が入っているような感じではないものの私は逃げられないと思った。
「大丈夫だよ、絶対にマリを追い出したりなんてしないから」
左の耳元で囁くようにそう言った叔父さんの顔は、間違いなく笑っていた。
実際のところ私はそれをこの目で確認できるような体勢ではなかったけれど、間違いない。
絶対に、笑っていた。
「僕が守るよ」
そう言って叔父さんは私の首を掴んでいた左手で私の首元をすりすりと縦にさすった。
「っ、…!」
その瞬間、私の喉の奥がヒュッと小さく音を立てた。
誰かっ…
助けて…
「叔母さっ…」
「うん?叔母さん?叔母さんは今ゴミ出しだよ。今日は燃えないゴミの日だから出すところが少し遠いんだ」
叔父さんはそう言いながら、私の首元を触っていた左手をスルッとシャツの中に忍ばせるとそのまま私の鎖骨を触った。
「っ、」
声、がっ…出なっ…
「叔母さんがどうしてもって聞かないなら、その時は叔母さんを追い出すからね」
「っ、」
「大丈夫、マリは何も心配いらないよ。そんなことでマリの食欲が減っちゃうなんておかしな話でしょ?何があったってこれからもマリはずっとこの家にいられるんだから。気にせず食べなさい」
私、間違ってたっ…
この人は叔母さんが出て行こうとしたって引き止めない…
私の方が大事なんだっ———…
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