イベント

今日は12月24日。




そうだよ!


もうすぐクリスマスだよ!




「あんたテンション低いねー…」



登校して早々、友人に掛けられた第一声がこれ。



「どうしたらテンション上げられるのか、教えて欲しいけどね…」



マフラーを外しながら、席へ着いている友人へそう言い返した。


このベージュのマフラーを貰ってから初めての冬。



「この間まで浮かれてたくせに…どうやったらこの数日でそんなに落ち込めるのか、逆に知りたいね」



溜め息混じりの友人のこの発言は間違っていない。



何故ならあたしは、確かに浮かれていた。


11日前の12月13日までは。


その日はあたしの17歳の誕生日で、学校の帰りに家の前で彼から誕生日プレゼントを受け取った。



毎年誕生日は、ママが朝からケーキを作ってくれて、家族団らんが定番。


だからその日、彼を家に招待した。


ママもパパも大喜びで、彼と家族と一緒に過ごせて、あたしにとっては今までで一番最高の誕生日になった。



彼から貰った誕生日プレゼントは、もちろんマフラーじゃない。



確かに少しだけ、もしかして…とは思った。



ただ、誤解しないで欲しいんだけど、あたしは決してマフラーが嫌とかじゃない。


彼からの贈り物なら、何だって喜んで受け取るもん。



家に入って彼を招待した事を伝える前に、「ママー!!プレゼント貰ったー!!」と、先に感動を伝えた。



それに驚いたママが彼の存在に気づいて「いらっしゃい」と微笑むまで、あたしの頭はプレゼントを貰ったとゆう事実で頭いっぱい。



大はしゃぎで中身を確認すると、ネックレスが入っていた。


あたしの好みと言うより、彼の趣味だろうなと思えるシンプルなデザインの物。



彼いわく、


「これが限界だった」


らしい。



女物のジュエリーなんて買った事が無いらしく、慣れてないその買い物に加えて、店員さんに「彼女にプレゼントですか?」と聞かれたから、尚の事「勘弁してほしい…」と言っていた。



「恥ずかしかった」と言わない彼は、本当に照れ屋だなと思う。



マフラーといい、ネックレスといい、彼からの贈り物は首に着ける物ばかり。



早速、貰ったネックレスを身に着けて、この日はずっと浮かれていた。



そんな訳で、



「じゃあ、ミズキの事だからあと半年は浮かれてられんじゃないの?」



只今、あたしはテンションが低い。



「その筈だったよ!」


「何…」


「だけど!」


「何が…」


「もうすぐクリスマスだよ!」



12月と言えば、あたしの中で2大イベントがある。


まず1つは、ハッピーエンドで終わったあたしの誕生日。


毎年12月が近づくと、誕生月だからウキウキしてくる。



それが終われば、



「クリスマスでしょ!?」



2つ目のイベント。



「…何あんた、まさかクリスマスに予定ないからって落ち込んでんの?」



ズバリ。友人の言う通り…


クリスマスは、毎年特に決まった予定は無かった。家族と過ごしたり、友達とパーティーをしたり、その年によって様々だった。



だけど今年は彼がいる。クリスマスは、彼と過ごせるんだって思ってた。


でもそれはあたしが勝手にそう思ってただけで、彼は違ってたらしい。


誕生日祝ったんだから、クリスマスはいいだろって考えなのかもしれない。



周りはどんどんクリスマスの予定を立てて行くのに、あたしだけまだ何も決まってなかった。



「先輩がクリスマスは一緒に過ごさないって言ったの?」



朝の教室内はとても騒がしく、それに負けじと友人が声を大きくした。



「何も言われてない!」


「え?」


「何も言って来ないの!」


「はぁ?」


「普通さ、クリスマス一緒に過ごすんなら誘って来るでしょ?」


「はぁ」


「絶対何も考えてないんだよ!あたしと一緒にクリスマスを過ごす気がないんだよ!」



毎日登下校を一緒にしてるのに、誕生日が終わって誘われると思ってたクリスマスについて、彼は何も言って来なかった。



「じゃあクリスマス一緒に過ごさないって言われた訳じゃないじゃん」


「一緒だよ!同じでしょ!何も言って来ないのは何もしないのと同じでしょ!」



そうやって、彼からの誘いを今か今かと待ち続けて、今日こんにちに至ってしまったとゆう始末。



「…ミズキってバカだね」



登校してまだ10分も経っていないのに、どうしてバカ呼ばわりされないといけないのか分からない。



「クリスマスの予定は先輩が決めるって誰かが言ったの?」


「なに、どうゆう意味?」


「クリスマスに、先輩がミズキを誘うって決まりでもあるの?」


「…別にそんな事は…」


「じゃあ先輩が誘って来ないからって、何も考えてないとは限らないじゃん」


「そうなの…?」


「そうでしょ…だいたいミズキも気になるなら聞けば良かったじゃん」


「…何て?」


「クリスマスどうする?とか、一緒に過ごさない?って誘ってもいんじゃん?付き合ってんだからさ、あなた達」


「……」


「クリスマスについては先輩から誘うって決め事でもしてんなら話は別だけど」


「…してない」


「じゃああんたやっぱりバカだ」



友人の言ってる事は、確かに一理ある。



だけどそうゆうイベントは、男の人から誘われるものだと思ってた。


ってゆうか、彼氏にクリスマスを誘われるのがちょっと夢だったりもしてた。



でも、翌々考えれば…遊びに行く時はいつもあたしから誘ってばかりで、彼からデートに誘われた事は一度もない!



そう考えれば、手も繋がない彼がクリスマスだからって誘ってくるとは思えない。




「どっちにしろ、ミズキが動かないと何も始まらないかもね」


「えー…あたしー…?」


「嫌なら今日1日ずっとそうしてなよ」



机に俯いてるあたしに、友人の冷たい言葉。



「だいたいさ、今日までの間にクリスマスの話題とか出なかったの?」


「…出なかった。だって、あたしは誘われるものだと思ってたから…」


「どんまい」



この人…どこまでも冷たい。



「まぁ先輩がクリスマスの話題を提供するとか無さそうだしね」


「どうしよー…」


「何が」


「あたし今から誘って来ようかな…」


「いや、計画とか何も立ててないのに誘ってどうすんの?」


「だってー…」


「だってじゃないよ」



そんな話をグダグダしてる内に朝のHRが始まって、あたし達はそこで会話をやめた。



クリスマスはもう始まってるのに、呑気に授業なんて受けてる場合じゃないんだ!



今すぐ彼に会って、クリスマスの予定を何とか決めて、それを実行しなければ成らない。



だけど学校とゆう組織に居る以上、あたしに勝手な行動をとる権利はない…



決められた時間に授業をきちんと受けないといけないし、受けるだけじゃなくて学習しないといけない事がたくさんある。


学生ってゆう身分で、恋だの愛だの優先してたら、きっと社会で通用しないんだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る