第1話

築四十年、木造の二階建てアパート。


かろうじてあるお風呂とトイレと洗面台は狭すぎる一つの空間にまるで押し込むように設置された三点式のユニットバスになっていて、


玄関を入ってすぐにある三畳ほどのダイニングキッチンには小さなシンクに小さなガス台。


その奥にあるこの部屋のメインと思われるそこは六畳のもちろん和室。



この建物自体に取ってつけたようにある今にも崩れ落ちそうななんとも頼りないバルコニーは、本当にそれを“バルコニー”と呼んでもいいのかと思わず疑いたくなるようなものだった。





「……とりあえず換気かな」





この三年誰も住んでいなかったというこの部屋は、言われなくてもそれが分かるくらいに無機質で何も感じない。


入った瞬間その埃っぽさに一気に喉をやられた気さえした。



未成年の少女が一人で住むのに部屋が二階だったのは、叔父さんのせめてものお情けだったのかもしれない。




…ただ、



「二階建てで“最上階”は笑うよなぁー…」










———…「最上階なんだから文句は言うなよ」



そう言った時の叔父さんの顔はなぜか少し怒っていた。




ここに来る前に買ってきたものをシンク横の台の上に置いて奥の部屋へ進み、ガラガラと大袈裟な音を立てて開いた窓は予想通り滑りも悪い上にサッシは黒ずんでいた。




それでも私の心と体は軽かった。


もちろん文句なんてあるわけない。



私は決して太っている方ではないとは思うけれど、はたしてこのバルコニーは私の体重に耐えられるのか。


そんな心配までしてしまった私は、窓は全開にしたものの外に出るのはやめておいた。





…まぁ何でもいい。


とにかくここは今日から私の城だ。



…私だけの。



そう思って一度大きく深呼吸をした時だった。




———…ピンポーン…!




この狭すぎる部屋にバカみたいに大きく鳴り響いたその音に、驚いた私は思わずすぐに真後ろを振り返った。

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