子供扱いをしているつもりはなかった。だけど彼女が子供である事に変わりはない。



越えられない一線があると伝えようにも、彼女はそこを飛び越えようとしてくる。それを…俺は無邪気な子供の無知な言動だと解釈した。



だけど彼女は違った。



危険がある事を認識した上で、安全に進む為にはどうしたらいいのかと覚悟を決めていた。大人になろうともがいているこの子に、無知だ無邪気だと決めつけて何も教えないのは無責任かもしれない。



正しく教えてあげる事が、危険を回避する事になるのかもしれない…



お互いの息遣いがやけに耳につく。



「彩ちゃんはこの先に進みたい?」


「…わたしは…四季くんなら…進んでみたいと思う…」



彼女の表情は見え難いけど、息遣いと震える声から想像が出来た。

 


「四季くん…?」


「うん。聞いてる…本当の事言うと、俺は君と、体の関係を持ちたいと思ってる…」


「…うん」


「だけど、今じゃないとも思ってる…」


「…どうして…?」


「彩ちゃんの気持ちと…体の準備が出来てない…」


「…わたし…?」


「彩ちゃん…どうゆう事するか、本当にわかってる?」


「…わかってる…」


「目を瞑って十数えてる内に終わるもんじゃないよ」


「……」


「彩ちゃんの体に痛みが伴うかもしれない。見られたくないところも見られる事になる…俺に全部見せれる?彩ちゃんはまず、そうゆう気持ちの準備が必要だと思う」


「……」


彼女の息遣いが揺れているのを感じた。泣いているのかと心配になり、握っていた手を摩ってみる。



「彩ちゃん…」


「…うん」


「大丈夫?」


「四季くん…」


「何?」


「…わたしの気持ちの準備はどうしたらいい…?」


「想像してみ。彩ちゃんはえっちな事を想像するのが恥ずかしい事だと思ってる?」


「…うん」


「実際えっちな事するんだから、想像しないと気持ちが追いつかないだろ?」


「四季くんと…えっちするところを…想像するの…?」


「え…?それは何か…かなり想像力が必要じゃね…?」


「…四季くんは初めての時、どうしたの…?」


「え?俺の初体験を彩ちゃんに話すの?それはそれで拷問って言うか…」


「…っ…四季くんありがとう…」



彼女の声が少し明るくなった。



「四季くん…お願いしてもいい…?」


「何?」


「今、ハグしていい?」



…可愛いなこの子…



「いいよ」


「…このまま手を伸ばせばいい?」


「うん。そのまま来て…そう、っ…」



彼女が伸ばした腕を掴み、膝の上に座らせた。



「四季くん痛くない?」


「大丈夫。彩ちゃんここに腕回して…」



首に腕を回してもらい、彼女の腰に手を回した。



「四季くん…好き…」


首にしがみつきながら、言葉を発する。



背中を強く抱き締め返したら、彼女もそれに合わせてしがみ付く。

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