第71話
「それでももう終わりにするの?」
「……」
「私もしかしたらユキの自由な時間奪っちゃうかもしれないし、ずっとそばにいたらウザいかもしれないけど…でもね、でもそれって好きだからだよ?好きだからちょっとでも一緒にいたいって思うし、それに、」
「はぁっ…」
私の言葉を遮るように大きく息を吐いたユキに私が思わず話すのをやめてそちらに顔を向ければ、目の前でしゃがみ込むユキは両膝に両肘を乗せるようにして両手で口元を覆っていた。
その顔は少し赤かった。
「やっべぇー…」
「えっ?」
「ナエちゃん…俺今のやっぱナシとか言われたら普通に泣くよ?」
「ユキ、…あの、」
「ナエちゃん、———…俺のこと好きなの?」
顔から両手を離して真っ直ぐに目を見つめながら改まるようにそう聞いたユキに、今のこの近すぎる距離を実感した私はとてもドキドキした。
「うん…好き…」
私が素直にそう答えると、ユキは照れたように「ふはっ」と笑った。
「私の好きって気持ち、信じてくれるの?」
———…“お前の言う好きって軽すぎなんだよ”
軽いって何だろう。
好きだから好きだと伝えて、それに軽いとか重いとか…私にはよく分からないな。
「好きな女の子の言うことを信じない男なんかこの世にいないよ?」
なぜか自信満々にそう言ったユキに、私は「ユキっ…!」と名前を呼びながら思わずそのまま膝立ちをしてユキに抱きついた。
その勢いのせいでユキは「うおっ」と言いながらそのまま後ろに尻餅をつき、それでも私をしっかり抱きとめてくれた。
「好きだよっ!!」
「うん、俺も」
「本当に本当にっ、私は私なりに、本っ当にユキのことが好きだからっ…!!」
「あははっ、ありがとね。それでもう俺は十分だよ」
それから彼はボソッと呟いた。
「やっと俺にもチャンスが回ってきたか」
— 05.『 私には私なりの、 』【完】 —
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