第3話
「なぁ、お前俺のことどう思てるん」
それはジャイアン改めタケシくんが私の元へと通い始めて二ヶ月が経った頃だった。
「どうって?」
私もすっかり彼に慣れてしまっていつの間にか敬語も取れてしまった。
聞けば学年は同じらしいからそもそも敬語である必要なんてどこにもなかったんだけれど。
「俺言うてるやん。好きやって」
「うん」
「せやから付き合おうって」
「うん」
「で、どうなんや、お前さんは」
彼は拗ねるように「ニレちゃんよぉ」と言って私の顔を覗き込んできた。
「私は別に好きとかじゃない」
「お前素直か。ちっとは迷えや」
「でも楽しいよ」
「え?俺とおるの?」
「うん」
「楽しいん?」
「うん」
「おもろいん?」
「うん」
「じゃあ付き合う?」
「ううん」
「なんでやねんっ!!!」
わざとらしくそう言って机を叩いた彼はそのまま机でリズムを刻み始めたから、私は思わずブッと吹き出した。
「あ、なぁ!これ何の曲か分かる!?」
そして急に話が変わるもんだから、私への好きが本気かどうかが私にはいまだによく分からない。
「えー?分かんない。リズム感ないんじゃない?」
「んなわけないやん!!俺歌上手いし!!当たったら付き合おうてやるわ」
「それなら一生当てないよ」
そんな私の言葉に、今度は彼がブッと吹き出して笑った。
ほら、やっぱり分からない。
この人の“好き”や“付き合おう”はもはや挨拶のようなものだったりするんじゃないだろうか。
それでも帰り際には真面目な顔で「ニレ、」と私の名前を呼んだりするから、私はその度にまた少し戸惑ってしまう。
「俺好きやで、お前のこと」
「うん」
「嘘ちゃうぞ」
「うん」
「お前には俺しかおらんで」
「……」
それには何も言わなかった私に、彼はフッと笑って「また明日な」と言った。
基本一人でいる私にとって、いつの間にか彼は私にとって味気のない日常へのちょっとしたスパイスとなっていた。
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