誕生!! 魔法少女ジューシーミカン 1
バースデーケーキのろうそくをふぅっと吹くと、部屋中にクラッカーの音が鳴り響いた。
「みかん! 10歳の誕生日おめでとうー!!」
パパとママが盛大に拍手をする。わたしも釣られて拍手をする。
「よーし、みかん。パパとママから誕生日プレゼントだ!!」
パパは向こうの部屋に行くと、すぐに何かを持って戻ってきた。
それはペット用のケージ。中からわんわん鳴き声が聞こえている。
「さーて、みかんに問題です。この中にいるのはなーんだ。ヒントはずっとみかんが欲しがっていた動物だ」
「ん-、分かった! ネコちゃんだ!」
「そう、ネコちゃんだー! っておい、わんわん鳴いてるんだから犬だろ」
パパがケージの扉を開けると中からワンちゃんが飛び出した。わたしがずっと欲しかった全身真っ白のもふもふワンちゃんだ。
「もう……みかんったら、パパを困らせちゃだめでしょう?」
ママがため息を吐いた。
「はーい。じゃあパパ、ありがとう!!」
「じゃあって何だ。じゃあって、でもパパは……みかんのそんな可愛い笑顔が見たかったんだー!!」
わたしの満面スマイルでパパは号泣した。
◇ ◇ ◇
その日の深夜――。
「わんわん」
雪丸っていうのはもちろんワンちゃんの名前。
わたしが付けたの!
可愛いでしょう?
「わんわん」
また吠えている。
でも気にしない。
「わんわん」
まだ吠えている。でも決して構ってあげない。わたしは今とっても眠いのだ。
「わんわん」
…………。
「よし、反応なし。寝たな」
――!?
え!? 今喋ったよねこのワンちゃん。
いや空耳かな?
そうだよね、きっとそう。
雪丸が喋る訳ない。
きっとわたしは疲れているんだ。
「それにしてもこのガキ、オレに雪丸とか変な名前付けやがって……」
やっぱり喋ってる!!
よし、それじゃあ――。
わたしは雪丸に思いっきり抱きついてみる。
「うわあ!」
雪丸は悲鳴をあげる。
「うーん……もう、食べられないよー」
とりあえず寝言のふり。
「はあはあ、なんだ寝言か……驚かせやがって」
なにやら安心しているようだ。
わたしは自分の両目をこれでもかというくらいグワッと開く。
雪丸とわたしの目と目がバッチリ合った。
わたしは問う。
「あなた今、喋ったよね?」
「うわああああ!!」
雪丸の悲鳴が家中に響き渡った。
◇ ◇ ◇
目の前にいるのは人の言葉を喋るワンちゃん。
わたしは尋問する。
「で? あなた、その流暢な日本語はどこで覚えたの?」
「90年代アニメを少々……」
「ほお、お客さん通ですなあ」
「ほんと……あの頃は良かった。って、聞くとこそこじゃねーだろ! まずはオレが何者なのかを聞けよ!」
「あなたの名前は雪丸。わたしのペット。それ以外に何があるっていうの!?」
「それだけじゃねーだろ。いやペットになった覚えもねーけど」
「雪丸については否定しないんだね。いやあ、我ながらこのネーミングセンスを誉めてあげたいよー。で? あなたは何者なの?」
わたしの問い掛けに真っ白もふもふワンちゃんは待ってましたと説明を始めた。
「よくぞ聞いてくれた! オレの本当の名前は――」
話が長いから
そこで不意打ちを食らって呪いを浴びちゃったみたい。
っていう辺りまで聞いてわたしは夢の中へ誘われていった。
zzz……。
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