第2話
八月。春しかないこの世界は、今日も桜が散っては咲くのを繰り返している。
一面の桜が咲き誇る、十八歳の誕生日。
私は今日、春の国の女王であるお母様を怒らせてしまうであろうお願いをするために、春色のお城の中の、桜モチーフになっている自分の部屋で、どう話を切り出そうかと頭を悩ませていた。
夜になると、誕生日のパーティーが行われるから、それより前に話しておきたい。
「お母様、少しお時間よろしいですか?」
覚悟を決めて、お母様の部屋の前に立つ。
「どうぞ」
桜の刻印が綺麗な扉の奥から聞こえる、今はまだ穏やかな声が覇気を持ったものになると考えると、少し開けるのをためらってしまう。
ふーっと細く長く息を吐いて、「失礼します」と、人生で数回しか入ったことのないお母様の部屋に足を踏み入れた。
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