第2話
彼の名前は、高橋八三郎。
それがこのたび同じ郭内の米代二之丁に住むわが父、禄高百三十石・津川瀬兵衛隼人の
とうとう男子に恵まれなかった父上は、わが家が
そこを高橋誠八さまが、ご子息を養子に出してくだされたのだ。
養子縁組は普通なら、親戚関係または両家に何らかの利を考慮した上で行われるものだが、彼の父御はわが家の内情に理解を示して、大事なご子息を津川家の跡取りとして寄越してくださった。
その情けある申し出を、父は涙を流して喜んだ。
八三郎どのは、ご実家からそのことをよく言い含められていたのだろうか。
いいえ。きっと彼は、生来から聡いのだろう。
まだ幼いながらも 母御を恋しがって泣いたりせず、新しい環境を
そうして彼は『津川喜代美』となったのだ。
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