第69話

「オイ、覇月。何がおかしいんだよ」



「いや。結は母さんにとても似ているから」




涙を拭い、結を見つめた。




え、お母さん?



お母さんの面影を思い出す。



お母さん、お母さんに会いたい。




「覇月。辛気臭くさせんなよ。こいつの母親、死んだばっかなんだぞ」




烈火は結を気遣った。



烈火には慈悲の心などないと勝手に思いこんでいたが、見当違いのようだ。




「あ、ごめん。紗和子さんのことじゃないよ。結のほんとうの母親のことさ」




私の、本当の母親?



本当も嘘もない。



私のお母さんだよ。



だけど、兄の圭介の言葉を思い出した。



私だけが、血が繋がっていないことに。




「ここではまだ話せないけど、結は完全に力を発揮できるわけではないんだね」




考え込むように、覇月はつぶやく。




「え?」

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