第52話

「散々な目に遭ったからって初めて会ったばかりの俺達のせいにするのか?」



「それは…………」




そう言い返されては何も言えなくなってしまう。




「冗談じゃない。あんたは必要な人材だから俺は生命を削ってまであんたを助けたんだぜ。そんなこと言われる筋合いはないよ」




少年は殺してやると呟き、瞳に炎を宿し私の首を絞める。



苦しくて言葉にできなかった。



しかし、すぐに苦しみはやむ。




「何するんだ。邪魔をするな!」



「この子は殺してはならない。長の命令だ。堪えろ」




微かに聞こえた長という単語。



長?




ゲホゲホと咳払いをした。




「結、大丈夫かい?」




穏やかな笑顔の青年が手を差し出す。



まるで太陽のような笑顔。



なぜ。どうして。



私は酷いことを言ったのに、私に手を差し伸べることができるの?




「どうして、私の名前を?」

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