第16話

家の前に立ち私は呼吸の乱れを整えた。



心臓がバクバクうるさい。



足だっておかしいくらいに震えてる。



自分の胸に手を当て大丈夫大丈夫と言い聞かせた。




「大丈夫大丈夫…………」




ほら。今だってそう。



無理に自分に言い聞かせた。



大丈夫大丈夫はお母さんの口癖だった。



お母さんは私が落ち込んだ時、おにいと喧嘩した時、どんな時も私に「大丈夫大丈夫」といい励ましてくれた。



だから大丈夫なんだ。



お母さんは死んでいない。



お母さんは絶対に死なない。



だって私のお母さんなんだもん。



そして、私がお母さんと血が繋がっていないなんて有り得ない。



家に入ってお母さんがいたらお母さんに問い詰めるんだ。



あんな冗談をなんで言ったのか。



誕生日だから冗談でびっくりさせようとしたんでしょ?と聞くんだから。




私は意を決して家に足を踏み入れた。



しかし、私はのちに後悔することになる。



禁断の扉を開かなければ、悲しい思いも辛い思いを、真実を知らずに済んだというのに。

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