第78話

そうして、最寄りの新大平下駅と終点の東武日光駅のほぼ中間地点にある新鹿沼駅を通過した。


線路の先がなくなるまで、

移りゆく景色が静止するまで、


非日常な旅は、残すところあと30分あまり──。



それまでに私は、彼の正体を見破ることができるのだろうか。


そしてその真実を知った時、私は一体どう思うのだろうか。





「んで? 最後に日光行ったの、いつだっけ?」




新鹿沼駅を出発してしばらく、田舎風景は変わらずのどかだった。


観光マップを再び開いていると、ハルナさんが声をかけてくる。




「先月のゴールデンウィークですけど、それが?」


「ふうん。どんなだった?先月行った、日光は」




こんなことを聞いてきてどうするつもりなんだと訝しく思うけど、返答してしまうくらいにはハルナさんへの警戒心が薄れていた。




「んー…、快適でしたよ」


「快適?」


「はい。人もそんなにいなかったし」


「ゴールデンウィークなのに?」


「……? まあ、そうですけど」


「ふうん、連休なのに人が少なかっただなんて、随分ラッキーだったんだな」




ハルナさんは淡々と口を開いた。




……そういえば、そうだったかも。



先月に日光を訪れた時は、ちょうどゴールデンウィークの真っ只中だったと。


だけど、案外空いていたような気がする。


あまりにも時間に余裕があったから、バスに乗って奥日光にも行くことができたんだ。

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