第51話
「ばぁちゃん〜、もう帰るの〜?」
「何を言ってんだよぉー、はやく帰って宿題やるんだべ?」
「やだ〜、めんどくさい〜、まだトモちゃんとこで遊んでたい〜」
「まぁ〜たこの子はワガママ言って。宿題がたんまりあるの、ちゃ〜んとばぁちゃんは知ってんだかんね〜?」
「いやだぁ、ミユはずっとトモちゃんとこでお絵かきしてたいよぉ」
「学校だってえらく大事だっぺよ」
口の中でコロコロと転がし、チョコレートを溶かしてからアーモンドを噛み砕く。
まろやかな甘みと芳醇な香りの二段構造を楽しんでいると、隣からそんな話し声が聞こえてきてしまった。
いや、聞くつもりじゃなかったんだけれど、ボックス席ってほら、かなり近いから。
──少し気になってハルナさんを盗み見てみると、彼はまた窓の外を眺めている。
私の目には彼が夢幻と化しているように映った。
「学校なんて行きたくない」
「まぁ〜た、それかい」
「だって、休み時間にお絵かきしてたらね? みーんな笑うんだもん。ミユちゃんは変な子だ〜って」
「気にしなければえかんべ」
「気にするよー」
よく見ると、私の隣に座っている女の子は身体のサイズにあっていない大きなスケッチブックを抱えていた。
学校というワードと、物をはっきりと言っている様子からして、彼女は小学校2〜3年生くらいなのだろう。
絵が、好きなのかな。
「友達はみーんなミユのことを分かってくれない。だから、キライ! しかもヘタクソって馬鹿にするんだ! 行きたくない! 宿題もやりたくない!」
「ミユ…」
「そんなんだったらずっとお絵かきしてた方がいいもんこんな気持ち誰にも分かんないんだっ」
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