第7話

いつもと変わらない朝のはずだった。


そのはずなのに。




通学路の途中、道路に猫が立ち止まったまま。


このままでは車にいつか轢かれてしまうと思った私は、左右確認をして道路の真ん中にいる猫の元に駆け寄った。


逃げない猫は飼い猫だろうか。


首輪にはレイと記されていた。



「レイちゃんね。随分と大人しいんだね。危ないからあっち行こうか」



しかし、黒猫のレイちゃんは何かに過敏に反応して私から離れる。



「レイちゃん………?」




プップッという自動車のクラクション。


私はひと足気づくのが遅かった。


気づいた頃には胸元に入れていた、慶太くん宛のラブレターは朱色に染まり血で滲んでいた。


私はこのまま死ぬの?


いやだよ。私はまだ卒業できてない。


慶太くんに会えてない。


せめて最後くらい……慶太くんに気持ちを伝えたかった。


慶太くんに会いたかった。

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