第15話 遊び? デート?
「い、いきなりどうしたのさ! ビックリしたんだけど」
突如公衆の面前で叫び散らす俺に驚いている怜。
いや当たり前なんだけどさ。
呱々原さんに至っては、フードスペースのテーブルの下に避難して蹲っていた。
ご、ごめん呱々原さん!
あとで土下座して謝ろう。
頭を下げすぎて価値があるのか分からないけど。
とにかくバレる訳にはいかない。
呱々原さんが必死に勉強を教えてくれてたのに、分かったフリして時間を無駄にした挙句、怜に裏で勉強観てもらってたんだよ?
ウルトラ酷い事してるよね。死刑判決もんだよ。
周囲の人の視線が突き刺さる中、慌てて誤魔化す俺。
「いや、まだ俺シュークリーム食べてないと思ってさ」
「それであそこまで叫んだのかい? 大丈夫か君は」
俺の行動を訝しむ怜。
「で、一体何を隠してるんだい?」
「……っぐ!!」
鋭い視線が突き刺さる。
ですよね。
俺怜に対して誤魔化せたことがないし。
この後洗いざらいぶちまけて呱々原さんに愛想をつかされる状況を想像する。
うーん、えへへ。絶対終わったよね!
そんな事を考えていると、表向きの俺の様子をどう受け取ったのか、
「……ふう。貸し、その二だね」
怜が視線を呱々原さんに送りながら、彼女に聞こえない音量でそう呟いた。
え、何も聞いてこないの?
「こういう時の日向って結構引きずって面倒くさいからね。今度僕には全てを白状すること。かまわないね?」
「……は、はい」
やっぱり隠し事をしてることは怜にはバレていたらしい。
あ、ありがとうございます。
俺が怜に申し訳なさを感じていると、
「じゃあ、僕は帰るから」
と怜が言い出した。
「え? 帰るの?」
「この後塾に行かないと行けないからね」
怜は何事もなかったかのように、普段通りのクールな表情に戻っていた。
「それじゃあね、夜奈ちゃん」
「……っ!!(コクコク)」
怜が微笑みながらお別れの挨拶をすると、テーブルの下でブンブンと首を上下に振る呱々原さん。
そうして怜が踵を返して歩き出すと、少し進んで立ち止まった。
振り返って俺と呱々原さんをじっと見る。
そしてそのまま何も言わずにまた歩き出した。
ん? なんだ?
直後携帯が振動する。
怜からの〇INEだった。
王子『そうだ。忘れてないだろうね。日向』
槙島『え? 何が?』
王子『次の日曜日だからね。約束』
怜が言ってるのは、一緒に買い物や映画に行く話の事だろう。
槙島『うん。大丈夫だよ』
俺はそう送って再度怜の帰る後姿を確認する。
心なしか足取りが軽快になった気がした。
■■■
シュークリームを食べ終わった俺と呱々原さんも、二人で駅までの帰路を歩き出す。
「……」
「……」
何故かそこに会話はなく。
き、決まずい。何でだろう。
さっきから呱々原さんが下を向いて黙っている。
俺からだと彼女の表情は見えない。
やっぱり、さっきの怪しまれてるよな。
もう素直に白状すべきか俺が悩んでいると、呱々原さんからまったく違う言葉が飛んできた。
「……や、やっぱり、仲が良いんだね」
「え?」
「そ、その。……お、王子さんと」
「そ、そうかな」
「……う、うん」
どこか元気がない様子の呱々原さん。
勉強の事が有耶無耶になったことに安堵しつつ、俺の思考は別の事で支配されていた。
……呱々原さん俺の事好きじゃね?
いや、あの、反応がさ! 別の異性との関係を気にしてる奴の反応に見えるんだって!
勘違いなのは分かってるけどさ!
何故か緊張する俺。
呱々原さんからの好意が俺の勘違いでも、俺と怜人飲との関係は彼女に勘違いして欲しくない。
それに、怜には買い物まで付き合うのに、呱々原さんはシュークリームだけっていうのも。
っていう建前のもと、もっと呱々原さんと一緒にいたい俺は口を開く。
「そ、そのうちさ、またお礼させてよ」
「……え、で、でも、シュークリーム」
「それだけじゃ足りないよ。勉強もそうだけど、日頃沢山お世話になってるから」
「そ、そんな事、ないよ。む、寧ろ私のほうが、その」
困りながらもモジモジと照れだす呱々原さん。
可愛い。
怜にはお礼で買い物の付き添いなんだよな。
「呱々原さんも一人で行けない所とかないの? 俺も一緒に行くとかどうかな。はは、なんてね」
俺がそう言うと、呱々原さんが立ち止まった。
「ん? 呱々原さんどうしたの?」
横並びに歩いていた俺が彼女を追い越して振り返る。
俺の声が耳に入ってないのか胸に手を当てて考える呱々原さん。
そして、
「……じ、じゃあ、その」
「ん?」
「デ、……………………デート」
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