第6話 ゲームの彼女は主人公②
無難な男性初期アバターを作成して、約束の十九時前に待ち合わせ場所であるゲーム内の集会場で待機する。
「呱々原さん、どんなアバターで来るんだろう」
自分のアバターを作ってる時に少し確認したけど、このゲームは女性キャラも凄く可愛くメイクが出来る。
呱々原さん可愛いし、アバターも凄く可愛く仕上げて来てるんじゃないかと若干の期待を寄せている俺がいる。楽しみだ。
にしても、さっきから俺の目の前で大剣携えた二メートル超の歴戦の勇士みたいなオッサンアバターがウロチョロしてるんだけど、コイツ邪魔だな。
画面視点から見て俺の手前にいるせいで、ディスプレイ画面を凄く占領して来るんだけど。
呱々原さん早く来ないかなと思っていると、オッサンがチャットで話しかけてきた。
『槙〇君ですか?』
呱々原さんだった。
俺もチャットを返す。
『そうだよ! なんかアレだね、凄いね!』
『(´▽`)ありがとう』
ちなみにボッチの俺にはPCマイクがないので通話する環境などない。
即席の環境ではチャットのやり取りが限界である。
パーティー登録して呱々原さんのアバターステータスを確認する。
……攻撃力が俺の三倍、防御力に至っては十倍以上あるんですけど。
良く分んないけど装備してる全装備にEXとか名前がついている。
ちょっと触った程度とか言ってたけど、絶対ちょっとじゃないよね呱々原さん。
■■■
俺が初心者ということで、最初は簡単な、弱くて小柄なドラゴンを十匹討伐するクエストを受注した。
『やばい! スタミナ切れて走れない! あと雑魚敵に袋叩きにされて死にそう!』
『これどうぞ。沢山あるので』
『ありがとう!』
呱々原さんは俺のHPやスタミナが切れる度に回復アイテムを沢山くれたり、
『この左上のゲージってなんだろう。敵切る度に上昇するけど』
『そのゲージが溜まると、コンボ攻撃が出来るよ』
武器の使い方など分からないことに親切に答えてくれたり。
俺のことをフォローしつつ、経験者だからといって決して余計な事は押しつけはしてこない。
何をするにしてもまずは見守るところは見守る丁度いい距離感。
なんだろう、呱々原さんが頼もしい。
っていうか俺が楽しめる様に凄く接待されてる感じがする。
『槙島君上手い』
『え、ほんと? 呱々原さんの教えがあってこそだよ』
『( •̀ᴗ•́ )و ̑̑』
そんな感じで似たようなクエストをいくつかこなして操作に慣れた所で、
『強いボス倒したくなってきた』
俺は調子に乗り始めていた。
操作には慣れたし、やっぱりこういうゲームって命賭けてなんぼっしょ。
スリルよスリル。
あと呱々原さんに接待されるだけじゃなくて格好良い所を見せたい。
『やってみる?』
と呱々原さんからも了承を貰ったので、二人で受けられる中で最上級に難しいクエストを受けてみることに。
巨大なボスドラゴン三体の討伐。
俺は首と指をポキポキ鳴らす。
「さーて料理しますか」
甘かった。
まずボス相手に俺の刃が一切通らない。
軽く吹き飛ばされて瀕死の重傷を負った挙句、近くにいた雑魚敵にも袋叩きにされる始末。
ごめん無理でした!! やばい助けて!!
そうしてHPがゼロ近くなり、ボスモンスター達も一斉に俺に突っ込んできた所で、
俺を取り囲んでいたドラゴン達が一斉に宙を舞った。
『大丈夫だよ』
目の前の呱々原さんが、大剣の一太刀で全ての敵を吹き飛ばしたのだ。
『心配しないで。もう傷つけさせない。私が守るから』
かっけえ!! え、誰!? 呱々原さん!? 呱々原さんなの!?
『私がフォローするから、好きに戦って』
そう言って怯んだボスモンスター達の群れに突進していく呱々原さん。
その後、呱々原さんは俺に対するいかなるボス達の攻撃も無力化し、俺とボスの一騎打ちの邪魔にならないように他のボス二体をハメ技でボコボコにしたりと、とにかくやばかった。
そうしてついに全てのボスの討伐が終わり、クエストが終了する。
時間はもうすぐ二十二時。
遊び終わりの時間としては丁度良い。
最後にある事が気になった俺は、
『呱々原さん。ボイスチャット出来る? ちょっと声が聴きたくて』
ゲームに内蔵されたボイスチャット機能を呱々原さんに提案した。
俺は話せないけど、呱々原さんの声は聴ける。
あまりにイケメン過ぎて本人か気になった。
「……うぇ!? ……ど、ど、どうした、の?」
そこにはいつもと変わらない呱々原さんがいた。
『ううん。ごめんね何でもなかった! 次は俺もマイク買ってくるよ! 今日はありがとう。凄く楽しかった! 呱々原さんも凄く格好良かったよ』
俺がそう言うと、
「……うぇへ」
ボイスチャットからそんな音声が漏れてきた。
お別れの挨拶をしてゲームを終える。
にしても、あそこまで極めてるなんて。
呱々原さんの勤勉さや努力量を改めて目の当たりにした気がする。
ゲーム一つとっても、彼女は一生懸命だった。
彼女がVチューバーとして売れたのも決してまぐれじゃないと思わせられる説得力があって。
俺も頑張らないと。
「改めてまずは小説のジャンルを決めて、、、」
そう考えた時、ふと、なんとなくだけど。
「ラブコメに、……してみようかなぁ」
いつも俺を励ましてくれる呱々原さんの事を考えながら、俺はそう思った。
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