第78話

目が覚めると何も覚えていなかった。





私の目の前にいる人たちが思い出せなかった。警察の人たちが来て、男の人2人の写真を見せられたけど何も思い出せなかった。





2人は私の知り合いで、殺人未遂があったと言われた。





それでもどちらの顔も思い出せなかった。




それでも、夫の優馬さんは優しくしてくれて、急かすようなことはしなかった。




妹も複雑そうな顔をしたけど、特に何も言わなかった。





目覚めてからは病院でゆっくり過ごしていた。優馬さんは側でパソコンを使い仕事をしている。





「この花…綺麗…ですね……」部屋に飾ってある黄色の花を指差した。





「僕の兄からだよ。とても君を心配していたんだけどね……訳あってこれないからって送ってくれたんだ。」彼はパソコンから目を逸らすと私を見つめた。





「そうなんですね…」花に手を伸ばすと扉が開く音がした。





「っ貴方が……」入ってきた女の人は泣いている。でも、全然知らない人だ。




この病室に来るのは妹と優馬さんだけ。





「どちら様ですか?」優馬さんが立ち上がると、彼女が中に入ってきて私にビンタをした。





彼女はポロポロと泣いている。





私は頬を触ると彼女を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る