第67話

「……なんで、私のことを知ってるの?」彼は笑っている。




「五条豊、優馬の兄で君の旦那候補だったものです。」記憶では彼は汚くて臭くて犯罪者という噂があった。




でも、目の前にいる男は小綺麗な男で私の25も上とは思えなかった。




それに、今まで何度か挨拶だってしている。





流石に分からないはずなかった。





「あなたが、五条さんだとしても、なんでそんなに私について知ってるの?それに、私も知らなかったことを。」俯きがちに聞いた。




「僕はね、君に助けられたんだよ。」彼は、そういうと笑った。




約10年前、私はこの人を助けたらしい。




電車の中で痴漢騒ぎが起こった。女子高生は彼の腕を取り「この人です。」と叫んだ。



彼はやってなかった。





でも、こういう時証明できるものがなければ否定することもできない。逃げることもできずに彼は困っていた。





そんな時私が「その人違いますよ。」と言ったらしい。




騒ぎを起こした女子高生は何度も痴漢騒ぎを起こしていた。それを覚えていた私は怪しい行動をしている彼女を隠し撮りをして彼が冤罪であることを証明した。





彼女は何度も示談金を受け取っていて、今回も示談金が目的だったらしい。




数日後、彼は私を見つけて話しかけてきた。





だけど私は「誰ですか?」と聞き返してきたらしい。





彼はその時、違和感を感じた。でも一度会っただけだし、そこまで重要視していなかった。




でも、その後数年たち結婚相手としてしまったことを知り私を調べた。そして違和感をまた感じた。




結局結婚はしなかったが、何度も顔を合わせても何か違和感を感じていた。





「今回、その違和感は証明された。僕ね少し前に扁桃腺の手術をしてね、少しだけ声質が変わったんだよ。後、少し痩せてしまってね。体格も変わったんだ。」





「君は気がつかなかったね。」と、笑った。





「声質が変わったって言っても少ししか変わってないんだ。気がつくのは君みたいに顔で人を判断できない人だ。」

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