恋人

第45話

彼に好かれたくて、少しでも見て欲しくて努力したの。





ダイエットだって、スキンケアだって、メイクだって頑張ったつもり。





でも彼はいつだって私のの事なんて本当は見えてないんだ。




「はなちゃん、久しぶり。」はなちゃんは大学時代の友人だ。





と言っても同じ大学ではなく、隣の部屋に住んでいる子だった。





私は音大、彼女は美大。




卒業してからは私は演奏会に出たりしている。





「最近はどうなの?海外の楽団に入るとかって聞いてたけど……」楽団の方から誘われてて3ヶ月後には日本から旅立つ予定でいた。





前に会った時にその話をはなちゃんにしていた。





「うん……それはやめることになったの。」私がそう答えると彼女は驚いた顔をした。「え、なんで?行きたがってたじゃない!」





「結婚することになったんだ。」そう伝えると、「結婚?」と驚いた顔をしていた。






「そう。いつかはその人とする予定だったんだけどね。親同士の話し合いで今度結婚する事に決まったの。」






「政略結婚ってこと?」彼女はそう聞いてきた。でも、実際そういう事になる。私は静かに頷いた。






「いいの?そんな……親の決めた人で……」彼女は心配してくれているのだろう。






「うん、いいの。とても素敵な人。私は彼のことがとても好きなの。」そう言うとホッとしたような、複雑なような顔をしていた。

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