第17話

待ち合わせ場所は高校の前だった。




さすがに夜だから誰もいない。彼も軽装で小さなキャリーバッグしか持っていなかった。





「待った?」私が聞くと「全然。」と彼が答えた。





そのまま最寄りの駅に行くと電車に乗った。





とりあえず東京駅まで着くとどこかホテルにでも泊まることにした。




私が御手洗に行っている間にりゅうは泊まる場所を確保したみたいでホテルまで案内してくれた。





着いたのはとても広い部屋だった。




まるで逃げるように出てきたのにこんなに贅沢をしてもいいのだろうか。と思うほどだ。




「こうゆう部屋って前もって予約とかしなくていいの?」と聞くと「知り合いの経営しているとこだから。」と言われた。






あの時の彼では出来ないようなスマートな対応に私は驚きつつ、部屋に入るとソファに座った。





「ここってタバコいい部屋?」私が聞くと「勿論。みなみは昔からヘビースモーカーだったからね。」そう言われて、「ばーか。」と笑った。





そこからは2人とも何も話さずタバコを吸っていた。





吸い終えてテレビを見ていると「旦那さんから連絡は?」とりゅうに聞かれた。





あの人から連絡なんて来てないはずだ。





今までも何日か帰らなかったけど、連絡が来たことなんて1度もなかった。




「あ……」勿論彼から連絡が来てはなかったけど、他の人からは連絡が来ていたことに気がついた。





「やっぱり来てた?」彼に聞かれて首を振った。「ううん、違う人。ちょっと連絡してくるね。」私はりゅうにそう伝えると脱衣所に向かった。

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