第74話

頭の片隅に優しかった頃の昂が浮かび上がった。



私は昂に惹かれたのは、忘れられなかった田中くんに重ね合わせていたから。




いつか優しかった頃の昂に戻ってくれるかもしれない。


いつか昔みたいに笑い合える日が来るかもしれないと、僅かに願ってしまってるから。



だからすぐに田中くんの気持ちに応えることが出来なかった。


うんといいたいのに出来なかった。



「田中くん…私」


「一ノ瀬…」

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