第71話

田中くんはずるい。今も昔も。


田中くんは分かってるくせに。


私が断れないのも、振り切ることなんてできないことも。



「あと、弁明させてほしい。いい加減な気持ちであんなことしたんじゃないよ。同窓会の二次会も仕事終わりのカラオケの時も」



やっぱり田中くんは覚えてたんだ。


あの日のこと……。



酔った勢いで私にキスしたこと…。



「酔った勢いなら気にしないでよ。わたし、忘れるから!あの日のこと。だからね?お互い忘れよ?」




作り笑顔で田中くんの腕を離し玄関先に向かう。

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