第89話

彼女は子どものようになってしまった。





実際殆どの記憶が無いのだから仕方がない。





「リン、俺と一緒に帰ろうか。」裕二は町に帰ろうとリンを誘った。





「まち?」リンは聞き返す「昔住んでいたところだよ。」裕二が言うと





「いやだ!ここにいる。……こわい!」と泣き喚いた。





「何か覚えてるのか?」裕二が聞いても「わからないけど、こわいの…」と、一生懸命に訴えてきた。





リンはかなり衰弱していた。






お金がないのかと思ったが、そう言うわけではなかった。




裕二が調べると、飲み屋街で働いていたからかかなり稼いでいた。それに、副業もしていたみたいで全て募っての過労だったらしい。





「リンは何にそんなに追い込まれていたんだろうな…」裕二はそう言った。




リンはしばらく入院する。裕二もリンが心配なため暫く東京に残ることにしたらしい。





そのため、今は俺の借りているマンションにいる。




「なぁ、そろそろ教えてくれよ。リンに何があったんだ?」マンションへ帰り缶ビールを飲む裕二に聞いた。






「リカが死んだのはただの事故じゃなかったんだ。リンが絡んでいた。あいつのせいではなかったんだけどな。」



思い返すように裕二は話し出した。





父親が絡んでいたこと。




あの時の事故はひき逃げで、目撃者もいなかったため、誰も捕まることはなかった。

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