第3話

「とりあえず、明後日から出勤して。」




そう言われ、私はお店を出た。隣にはスカウトしてきた裕二さんがいる。





「よかったじゃん。リカはいいやつだし、ここは繁盛してるから結構稼げるよ。」そういいウインクをした。




私は「はい、ありがとうございました。」そう答えると繁華街を後にした。





真っ直ぐ自宅に帰り鍵を開け家の中に入る。





「ただいま。」そう言っても返してくれる人はいない。





正確には人はいるけど返答してくれないんだ。




「ママ、ご飯食べた?」そう聞くとテレビを見ていたママはこっちをチラッと見てまたテレビに目を戻した。




冷蔵庫に入れてあったおかずは残っていて、炊飯器の中身は炊いた時のままだ。





私はレンジでおかずをあっためるとご飯とお味噌汁をよそい、ママの元へ持っていった。






「これ、置いとくね。」彼女はお味噌汁を手にすると投げつけた。





「……熱っ……」温めたばかりの汁は私の腕に直撃した。





「私の前に姿を表さないで。」ママはそう言った。





「ごめん……でも、お酒ばっかりじゃなくて何か食べて。お願い。」




「うるさいな、目障りなのよ。あんたのせいで私はずっと不幸。どっか行ってよ。」




そう叫んだ。





小さく「ごめん」と言うと自分の部屋へ戻った。






部屋に入った私は腕が痛むことに気がついた。





「あ、お味噌汁…」さっきの火傷を冷やさなかったからだ。





冷やしたいけど、水道がある場所はママのいるリビングを通らなければ行けない。




私はため息をつくと服を着替えて布団へ入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る