第17話



 なんなの、この子?



 案内してくれるのはありがたいけど、なんでこんなに怒っているんでしょう?



 兄さまと全然ちがう。この子、怖い。



 ………それでも。私を迷子だと気づいて、声をかけてくれた。


 もしかしたら私の前を何度も通ったのも、私のことを気にして戻ってきてくれたのかもしれない。



 でもそれなら、もっと優しく声をかけてくれたらいいのに。



 あんな鬼のような形相で怒鳴りつけてきて。

 夕日で顔が朱く染まっていたから、まるで赤鬼のようだったわ。




 ほら、今だって。


 歩くのが早いから、あんなに離れてしまって。

 背中を見失ってしまいそう。


 もっとゆっくり歩いてくれたらいいのに……。




 そう思いながら、遠のく背中を見つめて、私はできるだけ急いで足を動かす。




(見失ってはダメ。今度こそ本当に迷子よ!)




 ………でも。この足じゃ、追いつくことなんて到底できなくて。




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