第12話



 それから兄さまは、毎朝 日新館へと出かけてゆく。


 学業は午前中まで。


 そのあとは『什』のお仲間達とご一緒にどこかへ出かけて行ってしまう。




 私は毎日屋敷に居て、母さまからお裁縫や掃除のしかた、手習いを教えてもらう日々。



 この足を人に見られるのが嫌で、私は手習い所へは通わず母さまからすべてを教わっていた。



 もちろんそれがつまらないわけじゃない。



 けれど。



 どんどん、どんどん。

 兄さまとの距離が遠のいてゆく。




 …………さみしい。




 どうして私の足はこんななのかしら?


 どうして私は、男子に生まれてこなかったのかしら?


 男子ならば、健康な足ならば。


 どこへ行くにも、兄さまについて行けたのに…………。





 ――――林の家に来たばかりの頃が懐かしい。


 あの頃はまだ兄さまも、私の面倒をよく見てくださった。私とよく遊んでくださった。



 でも今は、日新館で、外で。

 お仲間の皆さまがたと、学問や武道を競い合うのが 楽しくて仕方がない様子。



 私の入る余地など どこにもない。




 さみしい。


 取り残されたようで さみしい…………。




 .

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