第一章　出会い

あにさまと什の掟。

　私の母とき子は、お父さまと死に別れたあと、

　郭外（かくがい）(城下外堀の外)にある新町三番丁に住居を賜（たまわ）った、林忠蔵さまの家に後妻として嫁（か）しました。

　そこには先妻みよさまとのお子、八十治（やそじ）あにさまがおられました。

　私よりひとつ年上の兄（あに）さま。

　ドキドキしながら、新しいお父上さまと兄さまの前で、初めてご挨拶した時を今でも覚えております。

　少し恐そうな威厳をたっぷりと纏（まと）ったお父上さまと、ぷっくりした頰（ほお）の優しそうなお顔の兄さま。

「ゆきと申します。よろしくお願いいたします」

　おふたりの前でぺこんとお辞儀をすると、

「なんとしっかりした子だろう」と、お父上さまに褒められました。

　お父上さまのとなりで笑って頷いてくださる兄さまを見て、

　ああ私、受け入れてもらえているんだ。

　ここに来て本当によかった。

　そう思いました。

　このとき私はまだ七つ、兄さまは八つでございました。

　．

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