第75話

辰巳は後ろを向いていて、顔だけをこっちに向けてるはずだった。

はずだったのに、急に辰巳は体をこっちに向けた。



──殴られるっ!



そう思った私は、

すぐにギュッと痛いくらいに目を閉じた。



だけど顔は痛くならなくて、グイッと強い力で引き寄せられて、すぐさま背中に痛みが走った。



階段の下の壁。


そこに押し付けられ、

目の前には私を見下している冷たい瞳があった。



獣のような目。


無感情のような奈央の目とは違う。


殺意がこもった目....。

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