第86話

「分かった、⋯行くわ」と、言ってきて。



「やっぱり聖くん嫌い?」


「うん、つーか聖くんとか呼ぶな」



即答⋯。



「でも真希の姉ちゃんが怖いから行くわ、マジ切れの姉ちゃん程怖いもんはねぇしな」



凄く不良の晃貴は、お姉ちゃんが凄く怖いらしい。

お姉ちゃんはあんなにも優しいのに

怖いところなんてないのに。

聖くんが嫌いだけど、お姉ちゃんが来てと言えば来るらしい。

やっぱり晃貴の考えはよく分からない。



晃貴は強いのに。

不良のトップなのに。



「お姉ちゃんのこと嫌い?」


「いや?」


「でも、怖いの?」


「怖いよ、唯一 俺が黙って殴られる相手だし」



そうなの?



「まあ、そういうなら真希の家族もだな」


「家族?」


「お前の家族には嫌われたくないからな」




不良なのに。

私の家族に嫌われることを恐れる晃貴は、今度こそ私にキスをしてきた。



「晃貴が私に厳しいのって、私の家族に嫌われたくないから?」



そう言えば、軽く笑った晃貴は、「これだけ甘やかしてんのに厳しいとかあるかよ」と、よく分からないことを言ってくる。



「真希が家族を好きだから、俺も大事にしてんの」




私が家族を好きだから―――⋯



優しくそう言ってくれた晃貴と、来年もずっと一緒にいたいとおもった。






「そういえばお父さんが晃貴たちにもお年玉!って言ってた」


「⋯それはマジで勘弁して」


「お母さんがね、初詣行くなら着物着る?って。晃貴の分も用意してくれるみたいで⋯」


「お前それ先に言えよ!人混みでも行くわ!」












おわり

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