第77話

「怖くねぇの?」


私が晃貴を抱き寄せたから。鼻と鼻がくっつきそうな距離で、それを呟かれる。



「怖かったら、右手あげる⋯」


「なんだそれ、ここ歯医者じゃねぇけど?」



ちいさく笑った晃貴は、愛おしそうに私を見つめてくる。



「⋯好き、晃貴⋯」


「いいのかよ?」


「うん」


「止まんねぇかもよ?」


「うん、さわられたい⋯」



甘く呟いた私に、晃貴は笑みを浮かべると軽くキスをしてきて。




「⋯んじゃ、怖かったら右手あげてください」



少し、イタズラじみたその表情しながら甘く、耳の奥まで届くその声に言われ、真っ赤になっている私の服のボタンに、晃貴は手をかけた。

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