第64話

と、その時、机の上に置いていたスマホが鳴った。


着信音がなるそのスマホは私のじゃなくて晃貴のもので。


画面を確認すると「てつ」との文字があり。






「晃貴」



付き合ってから分かったことは、徹からの着信は何かの用事がある時だけ。暇電とか、そういうのではかかってきたことが無いから。



「電話なってるよ」



何かの用事だろうと、私は晃貴に声をかけた。



晃貴は寝息をとめ、うっすらと目が開き、「⋯⋯だれ?」と私に問いかけてくる。


寝起きまで爽やかでかっこいい晃貴は、もしかしたら私の前ではわざと喧嘩とかしないのかもしれない。



「徹さん」


「あー⋯とって」


「ちょっと待って」



スマホをとり、晃貴の手にわたす。

寝起きだからか、少しだけ触れた晃貴の指先は暖かかった。



「⋯なんだよ」



私は小説に目を向き直した。



「あ?⋯あー、家⋯⋯⋯、ああ」



ふと、背後に違和感を感じて少しだけ後ろを向くと、晃貴はスマホを持つ手と反対側で私の後ろ髪で遊んでいた。

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