第55話

倉庫の部屋の中では、晃貴がスマホを見ながら寝転んでいた。いまは二人きり。目線はスマホなのに、私が入ってきたことに気づいたらしい晃貴は、「まきー」と私を呼んできて。



「なに?」と近寄れば、スマホから目線を外した晃貴は、ゆっくりと体を起こした。



手を伸ばし、そのまま私を引き寄せてくる晃貴は、私を晃貴の腕の中におさめると、「これ面白い、真希に似てる」と、そのスマホを見せつけてくる。



それは、どこからどう見ても、いじけている子供の泣き顔で。



はあ?って、ムカついて晃貴の事を見れば、「まあ、真希の方が可愛けど」と、また私が許してしまうことを言ってくる。


晃貴がいう「可愛い」に弱い私は、「晃貴はアレに似てる」と、不機嫌気味に呟いた。



「アレ?」


「意地悪なゴリラ」


「ゴリラ?真希ちゃん、ゴリラと付き合ってんの?」



ほら、また言い返される⋯。






「⋯晃貴って、なんでそんなに性格悪いの?」


「なにいきなり」


「だって意地悪ばっかり」


「真希が可愛いから悪いんだろ?」


「もう⋯」


「愛してるよ真希ちゃん」



軽く笑いながらそう言われるけど、晃貴の腕の中が凄く心地よくて。

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