第62話

寂しくて、悲しくて、辛くて、泣いた。






靴はもう私とお父さんのものしかない。





私は立ち上がって、リビングに入った。





お父さんの本が一度売れた時に一括で買った家。




当時うちには5人いたから、5人で住むにはちょうどいいくらいの大きさの一軒家。





でも、お父さんが帰ってくるまでは一人だ。





二人でも、きっと広く感じるだろう。




リビングに飾っているクリスマスツリーのオーナメントはゆらゆら揺れている。







まるで私に「ばかね。」と言っているようだった。





しばらく一人でソファに座りながらぼーっとした。




大きなケーキを一人で食べたくなくて、そういえば甘いものはあんまり得意ではない。





ご馳走を温めるのも、一人で食べるには億劫だ。




そもそも、おなかがすく気配はなかった。





携帯が光って誰かも確認しないで電話に出た。




「・・・もしもし」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る