第90話

松葉杖の無い和臣に、少し違和感があった。ただ普通に歩いているだけなのに、何だか背も高くなったような気がして。


そう思えばそうかもしれない。松葉杖を使っていたら体が自然と斜めになったりして、いつもの高さじゃなくなるから。


背筋がきちんと伸びている姿を見るのは初めてだった。




「そっち濡れてねぇ?」


「うん·····大丈夫」



私が傘を持ってないせいで、和臣の傘に入れてもらっている。そのせいで和臣の左肩が少し濡れていた。



「ごめんね、和臣の肩濡れてる·····」


「いや、いいよ。ってかヤバいなこれ」


「え?」


「すげぇ緊張する」



私に向かって笑いかけてくる和臣。確かに1つの傘で2人の人間が入っているから、距離が近いのは仕方の無いことで。

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